僕にとって「辻村深月の本」はビジネス本です。

@NHK_PRの初代アカウントを担当していた、浅生鴨(あそうかも)さんがMCを勤める「特別番組 現代文明アワアワ~」というラジオを聞いていて、思ったことを書きます。

ラジオの途中で、「ビジネス本」の話になったんです。最近ビジネス本が本屋さんに行くと、新刊がわんさか出ていて「これ本当に売れるん?」と思う本もあって、ぐっと惹きつけられました。しかも、今回ゲストとして呼ばれていたのが、日経ビジネスオンラインの柳瀬博一さん。かつて出版の編集者もしていたキャリアを持っている方なので、どんな話をするんだろうなーと思って聞いていました。

ちょい前まで、出版の編集者を13年ほどやってたんですね。正にビジネス書を作ってたクチなんです。で、ビジネス書って、なんだろうかって、僕も悩んだんですね、最初、配属された時。っていうのもね、僕も読んだことなかったんですよ、ビジネス書。誰が読むんだろう、一体、っと思ってて…。「信長に学ぶなんちゃらかんちゃら」みたいなのかなー、って思ってたんですよ。

で、僕が思うビジネス書というのは、内容ではないと。ビジネス書かどうかを決めるのは、編集者じゃなくて、読者なのだと思うんです。「あなたの仕事に役立てば、それがあなたのビジネス書」だと。だから、もしかしたら、鴨さんにとっては、村上春樹の「ハードボイルド・ワンダーランド」は、ビジネス書かもしれないわけですよ。

(中略)

売れてるビジネス書は、最終的にはビジネスを超えた、自己啓発の本です、必ず。だから、その本を読むことで「昨日の私より明日の私の方が良くなる」と信じられる本が、やっぱりベストセラーになります。その意味で言うと、皆さんが思っているビジネス書の中で、本当に売れた本は、ジャンルじゃなくて、ステージというかですね、あの読まれ方として、むしろ自己啓発の本になってるケースが多いと思うんですよね。
— 「現代文明アワアワ~」

ミリオンセラーになる本とは、100万人の人が入れ込まないと、ミリオンセラーにならない。ということはその本は「人間の中に共通するある心理」を必ず捕まえてるはず。(内容もさることながら)どこに読者は入れ込んでしまうんだろうと考えることを、柳瀬さんはしているのだと言っていました。

ここ最近一番売れた本「人生がときめく片付けの魔法」に関して、柳瀬さんはこう分析します。

「ときめく」と「片付け」と「魔法」って、つけましたけど、あれ僕は大したもんだな、と思ったんですよね。そもそも、人間は収集癖があるんですよね、生き物として。で、生き物として収集癖があるんで、集めるの大好きなんですよ。でも、矛盾するようだけど、人間は、片付けたいという欲望もあるんですよ。

でも、モノが余ってる現在って、とにかく集めちゃう方のほうが過剰になって、大抵片付けられなくなるじゃないですか。だから、片付けられないことに対する、ものすごく生き物としてのプレッシャーを常にみんな持ってるなぁ~と。コレクトする生き物としての自分と、片付けたい生き物の自分がせめぎ合った時に、コレクトのほうが圧倒的に多いのが現代ですよね? 

で、そのときに、「こうすると、片付けそのものが上位に立って気持ちよくなる」っていうその正に「片付けはときめきなんだ」って、看破したあの本っていうのは、1行もそう書いてないけど、すごく人間の本性というのを、鋭く突いてるなあと。

鋭く突いてるから、100、200万部売れたし、海外、日本とカルチャーの違うアメリカや、あの、他国で売れたっていう。で、そうすると、あの、あの本みたいなことの、書いてあることだけを見て、例えば「まあ、よくある話じゃん」って言っちゃう人いると思うけど、なんで200万人に受けたって言うと、極めて人間の深層心理をきっちり突いてあるから。
— 「現代文明アワアワ~」

ミリオンセラーを読むときのポイントは、「なぜこの本が売れたんだろうか」という、人間の共通したどこを動かしてるのかを見抜くこと。つまり、『売れている本が売れている理由こそがビジネスの秘訣』であり、だから売れてる本は、ビジネス書なのだといいます。


じゃあ、今回のビジネス本の定義だった、「その本を読むことで『昨日の自分より明日の自分の方が良くなる』と信じられる本」ってなんだろうなーと考えたときにパッと思い浮かんだのが、辻村深月さんの本でした。

自分が最初に辻村さんの本に出会ったのは、高校生の頃。家の近くのTSUTAYAで偶然見つけたのが「冷たい校舎の時は止まる」でした。そのときの帯についていた「今年一番の口コミ本!」というコピーにやられて買ったのがきっかけ。それ以来新刊が出る度に買って、最新刊「朝が来る」も速攻で買いました。(ちなみに、自分が一番好きな本は、「スロウハイツの神様」) 最近だったら、「島はぼくらと」も良かった。

作品の内容の濃さもさることながら、彼女の一番好きだなと思うところは、「登場人物の心情描写」。これまで発売されている本はすべて買ったけど、どの人も少しずつ似ているけど違う部分があって、「人ってこんなことを考えるのか、、」と参考になることばかりだった。普段へらへらしている人だって、毎日楽しそうにわらっている人だって、何もかもできるように見える人だって、みんなそれぞれ悩みを抱えているのだということを実感できたのは、辻村さんのおかげだと思います。

小説だから実際に起こった話ではないので参考にならないかもしれないと思ってたけど、今思えば、文章を書いているときに、「どういう人に届いてほしいのか」という読んでくれる人を意識して書く視点は、辻村作品を読んだからかもなーなんて思います。他にも、色んな人がいるから自分と合わない人間もいるわけで、全員と仲良くなろうとしなくてもいいのだということも教えてもらいました。

僕にとって「辻村作品」は、列記としたビジネス本だと思います。みなさんの思う「その本を読むことで『昨日の自分より明日の自分の方が良くなる』と信じられる本」ってなんですか?

(ちなみに、昔こんなエントリーを書いていました。)


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